(派遣先の責務②)適正な派遣就業の確保
派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者から派遣就業に関して、苦情の申出を受けた時は、その苦情の内容を派遣元事業主に通知するとともに、派遣元事業主との密接な連携のもとに、誠意をもって、遅滞なく、その苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければなりません(労働者派遣法第40条第1項)。
その他、派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、派遣就業が適正かつ円滑に行われるように、適切な就業環境の維持、診療所や給食施設等の施設で現に派遣先に雇用される労働者が通常利用しているものの利用に関する便宜の供与等必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(労働者派遣法第40条第2項)。
(1)苦情の適切な処理
苦情の申出
派遣労働者から派遣先に出される苦情の申出(例えば、指揮命令の方法の改善等)は、派遣先事業主、派遣労働者を直接指揮命令する者、派遣先責任者に限らず、派遣先や派遣先に代わって派遣労働者を管理する職務上の地位にある者が認識し得るものであれば、申出としての効果を持ちます。
また、申出の方法は、書面でも口頭でも問題ありません。
苦情の内容の派遣元事業主への通知
苦情の申出を受けた場合は、その苦情の内容を、遅滞なく、派遣元事業主に通知しなければなりません。
ただし、派遣先で申出を受けた苦情の解決が容易であり、現実的にその苦情を即時に処理してしまったような場合は、あえて派遣元事業主に通知する必要はありません。
苦情処理の方法
派遣労働者の苦情が、派遣先の派遣労働者への対処方法だけに原因がある場合は派遣先だけで解決が可能ですが、その原因が派遣元事業主にもある場合は、単独では解決を図ることが困難です。この場合は、派遣元事業主と密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図っていくことが必要となります。
いずれの場合も、中心となってその処理を行うのは派遣先責任者ですが、派遣元事業主にも原因がある場合は、派遣先責任者が派遣元責任者と連絡調整を行って、その解決を図る必要があります。
派遣先は、派遣労働者の受入れに際して、説明会等を実施して、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、派遣先において苦情の処理をする方法、派遣元事業主と派遣先との連携を図るための体制など、労働者派遣契約の内容について派遣労働者に説明する必要があります。
苦情の申出を理由とする不利益取扱いの禁止
派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由として、その派遣労働者に対して不利益な取扱いをすることは禁じられています。
この「不利益な取扱い」には、苦情の申出を理由として、その派遣労働者が処理すべき業務量を増加させるなど、派遣労働者に対して直接不利益取扱いをおこなうことのほか、苦情の申出を理由として派遣元事業主に対して派遣労働者の交代を求めたり、労働者派遣契約の更新を行わないなどの間接的に派遣労働者の不利益につながる行為も含まれます。
また、派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由とする労働者派遣契約の解除は、労働者派遣法第27条に違反する行為です。
(2)適正な就業環境の確保
適正な就業環境の確保
適切な就業環境の維持、福利厚生等
派遣先は、派遣労働者について、派遣就業が適正かつ円滑に行われるようにするため、セクシュアルハラスメントの防止等適切な就業環境の維持、その雇用する労働者が通常利用している診療所や給食施設等の施設の利用に関する便宜を図るように努めなければなりません。
また、派遣先は、派遣元事業主の求めに応じて、派遣労働者と同種の業務に従事している派遣先の労働者等の福利厚生等の実状を把握するために必要な情報を派遣元事業主に提供するなどの協力をするよう努めなければなりません。
教育訓練、能力開発
派遣先は、派遣元事業主が行う教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発等の派遣労働者の教育訓練・能力開発について、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければなりません。
派遣労働者に対する説明会等の実施
派遣先は、派遣労働者の受入れに際しては、説明会等を実施して、派遣労働者が利用できる派遣先の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、派遣労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係についての説明、職場生活上注意を要する事項についての助言等を行う必要があります。
派遣元事業主との連絡体制の確立
派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36条第1項の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求めることによって、派遣元事業主との連絡調整を的確に行う必要があります。
(3)雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストへの労働者派遣の受け入れ
派遣先は、雇用調整により解雇した労働者が就いていたポストに、その解雇後3か月以内に派遣労働者を受け入れる場合には、必要最小限度の労働者派遣の期間を定めるとともに、派遣先に雇用される労働者に対して労働者派遣の役務の提供を受ける理由を説明する等、適切な措置を講じ、派遣先の労働者の理解が得られるよう努める必要はあります。
これは、安易な雇用調整の結果、派遣を受け入れるということは許されるものでなく、雇用調整によって解雇した労働者が就いていたポストへの派遣の受入れについては、特に慎重に判断すべきでしょう。
(4)安全衛生に係る措置
派遣先は、派遣元事業主が雇入れ時の安全衛生教育を適切に行えるように、派遣労働者が従事する業務の情報を派遣元事業主に対して積極的に提供すること、派遣元事業主から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申入れがあった場合には、可能な限りこれに応じるよう努めることなど、派遣労働者の安全衛生に係る措置を実施するために必要な協力や配慮を行う必要があります。
なお、「派遣労働者が従事する業務に係る情報」の内容としては、例えば、派遣労働者が派遣先で使用する機械・設備の種類・型式の詳細、作業内容の詳細、派遣先の事業場における労働者に対する雇入れ時の安全衛生教育を行う際に使用している教材、資料等が考えられます。

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