個人情報の保護
派遣元事業主は、労働者派遣に関して、その業務(紹介予定派遣をする場合における職業紹介を含みます。)の目的の達成に必要な範囲内で労働者の個人情報を収集、保管及び使用してはなりません(労働者派遣法第24条の3第1項)。その個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければなりません(労働者派遣法第24条の3第2項)。
また、派遣元事業主とその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上知りえた秘密を他に漏らしてはなりません(労働者派遣法第24条の4)。
特に、紹介予定派遣をする場合に職業紹介を行う段階では、職業紹介を行う事業主として、個人情報の保護等について、職業安定法などの法律の規定が適用になることに留意し、紹介予定派遣の各段階に応じて、派遣元事業所や職業紹介事業所として、それぞれ必要な個人情報保護措置を講じる必要があります。
個人情報の収集
派遣元事業主は、派遣労働者となろうとする者を登録する際には、その労働者の希望や能力に応じた就業の機会の確保を図る目的の範囲内で、その労働者の個人情報を収集する必要があります。
また、派遣元事業主は、派遣労働者として雇用して労働者派遣を行う際には、その派遣労働者の適正な雇用管理を行う目的の範囲内で、その労働者の個人情報を収集する必要があります。
派遣元事業主は、次にあげる個人情報を収集してはなりません。ただし、特別な業務上の必要性が存在するなど業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合はこの限りではありません。
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
上記1.から3.に該当するものとして、具体的には、次のような事項があります。
1.について
- 家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取扱い等労務管理を適切に実施するために必要なものを除きます。)
- 容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報
2.について
- 人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書
3.について
- 労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
ここで「業務の目的の達成に必要な範囲」については、雇用することを予定する者を登録する段階と、現に雇用する段階では、異なることに留意する必要があります。
雇用することを予定するものを登録する段階では、例えば、労働者の希望職種、希望勤務地、希望賃金、有する能力・資格など適切な派遣先を選定する上で必要な情報がこれにあたります。
現に雇用する段階では、給与事務や労働保険・社会保険の手続上必要な情報がこれにあたります。
当然ながら、労働者の銀行口座の暗証番号を派遣元事業主が確認することは、「業務の目的の達成に必要な範囲」に含まれません。
そして、派遣元事業主は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集するか、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集するなど適法かつ公正な手段によって行わなければなりません。
個人情報の保管と使用
個人情報を保管する場合、又は使用しようする場合は、収集目的の範囲に限られます。
なお、派遣労働者として雇用して労働者派遣を行う際には、労働者派遣事業制度の性質上、派遣元事業主が派遣先に提供することができる派遣労働者の個人情報は、労働者派遣法第35条の規定によって、派遣先に通知すべき事項のほか、その派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られます。ただし、他の保管又は使用の目的を示して本人の同意を得た場合や他の法律に定めのある場合は、この限りではありません。
個人情報の適正管理
派遣元事業主は、その保管又は使用に係る個人情報に関して、次の措置を適切に講ずるとともに、派遣労働者等からの求めに応じて、その措置の内容を説明しなければなりません。
- 個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置
- 個人情報の紛失、破壊及び改ざんを防止するための措置
- 正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置
- 収集目的に照らして保管する必要がなくなった(本人からの破棄や削除の要望があった場合を含みます。)個人情報を破棄又は削除するための措置
派遣元事業主等が、派遣労働者等の秘密に該当する個人情報を知ることができた場合は、その個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないように、厳重な管理をおこなわなければなりません。
ここで、「個人情報」とは、個人を識別できるあらゆる情報をいいます。このうち「秘密」とは、一般に知られていない事実であって(非公知性)、他人に知られないことについて本人が相当の利益を有すると客観的に認められる事実(要保護性)をいいます。具体的には、本籍地、出身地、支持・加入政党、政治運動歴、借入金額、保証人となっている事実などが秘密にあたると考えられます。
個人情報適正管理規程の作成
派遣元事業主は、次の事項を含む個人情報適正管理規程を作成するとともに、自らこれを遵守し、かつ、その従業者にこれを遵守させなければなりません。
- 個人情報を取り扱うことができる者の範囲に関する事項
- 個人情報を取り扱う者に対する研修等教育訓練に関する事項
- 本人から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含みます。)の取扱いに関する事項
- 個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する事項
なお、3.について開示しないこととする個人情報とは、その個人に対する評価に関する情報が考えられます。また、4.について苦情処理の担当者などの取扱責任者を定めることが必要です。
不利益取扱い
派遣元事業主は、本人が個人情報の開示や訂正の求めをしたことを理由として、その本人に対して不利益な取扱いをしてはなりません。
ここで、「不利益な取扱い」とは、例えば、以後、派遣就業の機会を与えないことなどをいいます。
個人情報保護法の遵守
派遣元事業主は、上記のほか、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第2条第3項に規定されている個人情報取扱事業者に該当する場合には、個人情報保護法第4章第1節に規定する義務を遵守しなければなりません。また、個人情報取扱事業者に該当しない場合であっても、個人情報取扱事業者に準じて、個人情報の適正な取扱いの確保に努める必要があります。
秘密を守る義務
派遣元事業主やその代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上知り得た秘密を他に漏らしてはなりません。また、派遣元事業主やその代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様です。
ここで、「正当な理由がある場合」とは、本人の同意がある場合や他の法益との均衡上許される場合などをいいます。
また、「秘密」とは、個々の派遣労働者(雇用することを予定する者を含みます。)や派遣先に関する個人情報をいい、私生活に関するものに限りません。職務を執行する機会に知り得た個人情報も含みます。
「他に」とは、その秘密を知り得た事業所内の使用人その他の従業員以外の者をいいます。
違反の効果
個人情報の保護に関する規定に違反した場合には、派遣元事業主は、許可取消し(労働者派遣法第14条第1項)、事業停止命令(労働者派遣法第14条第2項、労働者派遣法第21条第2項)、改善命令(労働者派遣法第49条第1項)の対象となります。

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